虹色たまごのこそだ手帖(2)
第2回 特徴?個性?
たんたんが自閉症だとわかったのは、脳性まひの診断が下りてから9か月も後のことだった。それまで3人のなかでも特に表情豊かな子だったので、まさかこの子が自閉症だなんて思いもよらなかった。幸か不幸か、脳性まひによる身体のぎこちなさのせいで、自閉症児によく見られる「くるくる回る」「物を並べる」なんて行動もまったくしなかった(できなかった)のよね。
その頃のわたしの呑気さを象徴しているのが、母子手帳の1歳の記録にある、「どんな遊びが好きですか」の欄。
- まぼ・・・研究、高い所にのぼる
- あーちゃん・・・いないいないばあ、絵本
- たんたん・・・歌ってもらうこと、物を散乱させること(←遊び?)
1歳児が研究って…親バカ度120%の記述だね。でもホント、黙々と絵本を並べたり、おもちゃそのものよりおもちゃの仕組みに興味を抱くまぼの姿は、いかにも研究者風だったの。3人それぞれ好みも遊び方も違っているのが、面白くて楽しくて大好きだった。「どうよ?この個性!」って自慢したくなるくらい(笑)
今、あらためて母子手帳を見返してみると、「これは発達障害の特徴だったのかなあ」と思う部分もある反面、やっぱり「これは発達障害という個性だよなあ」とも思う。だって、あんなにかわいくてユニークだと感じていた行動の数々が、診断をうけたとたん「ショウガイ」に豹変しちゃうなんてヘンだもの。
あとね、発達障害がわりと周知されてきた今の時代でも、その解説自体が「多数派」の枠でくくられているなあと感じることがある。たとえば自閉っ子によく見られる耳ふさぎ。聴覚過敏の子が周囲の喧騒をシャットアウトするため、と書いてある本が多いけれど、たんたんは渋い表情で耳をふさぐときと、笑顔で耳をふさぐときがあった。ある日、ニコニコして耳をふさいでいるときに、となりで同じことをしてみたら・・・あら不思議!周りのざわざわという音が軽減されて、たんたんの大好きなチャイムの音だけがよーく聞こえたのだ!なるほど、大好きな音をよりクリアに聞くために、耳をふさいでいたのねえ!好きな音を聞くために耳をふさぐ、なんて記述は見たことがないけれど、それが個々の感覚の違い、いわゆる「個性」なのかなと思う。
もうひとつ、たんたんの目が急に合いにくくなった2歳頃、砂をシャラシャラ落とす遊びをひたすらくり返すたんたんのとなりで、まったく同じことをしてみた。砂の何を楽しんでいるのかな?どこに惹かれているのかな?という好奇心からの行動だったのだけど、となりで延々と砂をシャラシャラする母の姿に、それまで砂しか見ていなかったたんたんが「え?!」とまんまるの目でこちらを向いてくれたのだ。鳩が豆鉄砲をくらったようなびっくり顔は、今でもはっきりと思い出せる。たんたんのアンテナと母のアンテナが、ビビッと交信した記念すべき瞬間(笑)こういう「おぉ!」の瞬間が、障害児育児のクセになる幸せ(中毒性あり!)だと思う。
「郷に入れば郷に従え」というように、相手を理解したいと思ったら、ちょっとあちらの世界にお邪魔してみるのもいいかもしれない。ついついこちらの世界に引き戻そうとしたり、こちらの基準に合わせようとしてしまいがちだけど、よくわからなくても、まずはいっしょにやってみる。同じ高さで物を見てみる。「いっしょ」は仲良くなる第一歩かもしれないね。
プロフィール
じゅん
色とりどりな中2の3つ子と家族5人で、愛知県に生息中。アスペッ子なまぼ、天然なあーちゃん、重度の知的障害&コテコテの自閉症のたんたんとともに、笑ったり、ずっこけたり、たまにへこんだりしながら、マイペースに暮らしてます♪
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